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不動産コンサルタントの始末記。突然の相続対策、不動産投資の失敗への警告、不動産セミナー&ビデオ、書籍販売、不動産トラブル処理など、実務に即したコンサルティングを提供します。
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倉 橋 コ ン サ ル 始 末 記
Customer Focus Consulting Networks

バブルが残したトラブル処理 Part5

倉橋コンサル始末記は、住宅新報に連載されています。


不動産コンサルタント始末記

第5話 脅 迫

 「おい、吉田はいるか。」ある日、役場の受付に、柄の悪い男から電話が入った。「お前の所の役場では、役人は借金を返さなくていいって教育してんのか!責任者、出せや!」

 「課長、た、たいへんです。」電話に出た受付の女性が、大声で課長を呼んだ。「吉田さん宛で、暴力団のような人が騒いでいます!」
 さほど広くない役場に、女性の声が響き渡った。運悪く吉田は外出中であった為、課長が電話に出るしかなかった。
 「はい、お電話代わりましたが。」課長は、丁寧な口調で電話に出た。「あいにく、吉田は外出中ですか。」
 「あんた、誰?」相手の男は、課長の立場を確認し、「おたくの部下、吉田っていうの、いるよね。公務員の癖して借りた金、返しませんねん。あんた、上司なら上司らしく、きつく叱ってもらえませんか。」関西訛りの言葉で、神経を逆撫でするように課長に言った。「役場の町長さんは、親も同然、あんた課長さんは、兄貴も同然や、な、仮に吉田が借金返せなんだら、兄貴や親が面倒見る、これが正しい姿や。」妙な理屈をつけ、最後に「明日まで待ったるわ。万一、明日までに耳を揃えて返済しなければ、役場、乗りこんどるさかい、覚悟しいや。」低い声で恫喝し、電話を切った。

 課長がうな垂れて電話を切ると、一瞬、役場全体が静寂に包まれた。

その日、吉田は、課長と係長に呼び出され、今後の方針などを問いただされたが、吉田自身、既に消費者金融業者数社に400万円を超える借金を抱え、どうしてよいか分からない状態であったし、不当な金融業者からの夜中までいたる、矢のような催促に疲れ果てていた。更に、昨日、吉田の家の前には、猫の死体が投げ込まれ、玄関の扉には「死ね!」と書かれた紙が貼られていた。吉田自身、本当に死ぬしかないのかな、などと考えるようになっていた。

その夜、吉田は、久しぶりに実家へ電話をかけた。別に、お金を無心するつもりではなく、死ぬ前に、一言、母の声が聞きたかった。

「浩、お父さんには話してあるから、お金、どうすればいいか教えてちょうだい。」吉田は、何も言っていないのに、突然、母は言った。
「えっ、何のこと。」吉田は、とぼけようと努力したが、言葉が詰まったまま声が出ず、結局、泣き出してしまった。きっと消費者金融の連中が、両親にも執拗に電話をかけていたに違いない。そんなことを考えると、本当に自分など死んだほうがよいのではないかと泣きながら考えた。「母さん.....、死にたい。」
「何を馬鹿なこと言うのよ。しっかりしなさい。」母は、毅然と吉田に言った。「お父さん、別に怒ってないわよ。」子供の頃、何かにつけて厳格な父に怒られていた吉田を、いつも母は、こんな言葉で慰めていたことを思い出した。そして母は、「お金のことは、心配要らないわ。お父さん、学校辞めちゃったから。」と翳った口調で言った。

吉田はしばらく、受話器をもったまま泣き崩れた。

翌日、母は、吉田の銀行口座に500万円を振り込んでくれ、消費者金融の返済はすべて片付けることができた。このお金が父の退職金の一部だと考えると気が重かったが、逆に、早く決着をつけなければならないという勇気のようなものも感じていた。

「戸塚さん、いらっしゃいますか。」吉田は、どうしてよいか分からず、友人の戸塚に電話をかけた。戸塚は、とある不動産業界雑誌の記者をしており、彼に相談すればよい解決方法が見つかるのではないかと考えたのである。
「はい、戸塚ですが、吉田さんって、どちらの吉田さん。」ぶっきらぼうに電話に出た戸塚は、面倒くさそうな口調だった。
吉田は、戸塚に、一連の話を洗いざらい話した。また戸塚は、権藤のことも良く知っていたから、ひょっとすると消息も分かるのではないかと、若干、期待もしていた。
「お前、馬鹿だよな。」概ね話を聞いた戸塚は、吉田に言った。「買う前に、相談しろよ。」言われてみればそうである。同じ東京で戸塚は、不動産業界誌の記者として働いているのである。「権藤の会社ったって、バブルの頃は威勢は良かったけど、お前がこのマンション買ったときは、半ば休業状態。松本って言ったかな、あそこの社長。この頃は、借金取りに追い立てられてたんじゃないの。」さすがに記者だけあって、情報網はすごいと思った。「で、どうしろっていうの。」
「俺、このマンション、どこにあるかも知らないし、いま、いくらで売れるのかも分からない。」吉田は、戸塚ならきっと力になってくれるような気がした。「実は、どうしていいのかも、分からないんだ。」
「そんなこと言われても、おれ、記者だしな。」しばらく考えてから「そういえば、先日、取材した会社の社長、変わってるから相談にのってくれるかも知れないなぁ。」戸塚の頭の中に不動産コンサルタントの倉橋の名前が浮かんでいた。「この社長、他の出版社からだけど、あっと驚く不動産投資って本出しててさ、前は、賃貸トラブル110番っていうのも出していたから、結構、この手の話は相談にのってくれるかもな。」戸塚は、倉橋の印象を大まかに話し、「一応、おれ、掛け合ってやるから、結果を電話してやる。じゃあな。」電話は切られた。

かくして、この事件は、不動産コンサルタントの倉橋のところに持ち込まれることになった。


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