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不動産コンサルタント 倉 橋 レ ポ ー ト 2008年8月号
         
 
取り込み詐欺! 巧妙な手口 (6)

「ま、信用したい気持ちはわかるけどさ、もう俺には判断できないな」山本は、そういうと「俺、いいひと知っているから、紹介してやるよ」そう一言付け加えて、事件のことは忘れ、古くからの友人同士にもどり、その日、二人は飲み明かした。

この話を倉橋が聞いたのは、山本からの紹介で、山田が港南台にあるCFネッツの横浜本部にきたときだった。

「これ、正直言って、詐欺じゃないかと思いますよ」倉橋は、山田の話を聞いて、直感的に思った。「山本君から概ね内容は聞いていますが、山本君がいうとおり、この第三者に移転するのはおかしいですよ。ま、最初の許認可をとる目的として所有権を移転してしまうと言うのも、はっきりいって、乱暴で、おかしい行動ですけどね」
「で、僕は、具体的にどうしたら良いんですか」か細い声で、山田は言った。「不動産のことは、無知なんです」
「この話、最初の秋山とか言うハウスメーカーの社員のときからおかしい話です」倉橋は、以前、相談にのったが断念せざるを得なかった詐欺事件に酷似している部分を指摘した。
「山田さんのお父さんのような話を、以前、相談にのったことがあります。ネットワーク詐欺とでもいうのか、相続税の納税で困っている人の情報って、どこかで流れるようで、タイミングよく相続関係の相談相手が現れ、うまい話を持ちかける。そこで一度、詐欺に引っかかると次々にいろいろな人が現れ、うまい話を持ちかけられる。騙される側は、その都度、損した金額を取り戻そうと、今度こそはと、そのうまい話に乗ってしまい、結果的に全財産をとられてしまうというのが、この手の詐欺集団の常套手段のようです」
「え、うちの父も、その詐欺集団の餌食と言うことですか」山田は、顔色を変えて、事件の重大性を感じ取った。「うちも、全部、取られてしまうんですか」
「でも以前の方は、全財産を第三者に譲渡されてしまって取り返しがつかない状態でしたが、山田さんのところは全財産までは行ってないし、今回の件も争って、多少、取り返すこともできるかもしれない」
「これって、危ないところだったんですね」明らかに、山田は落胆した。
「山田さん、山田さんは長男ですよね」倉橋は、うな垂れている山田に言った。「この山田家の土地については、将来、山田さんが相続するわけだから、まずは不動産に興味をもたなきゃ駄目ですよ」
「父は、僕に、家のことは何も教えてくれないし、聞いた所で、今の仕事が忙しいから動くこともできない」少し俯き加減で、自信がなさそうに言った。「今回のことだって、成り行きは分かりましたが、結局、何もできないで、ここに来たわけですから」
「そりゃ、そうかもしれないね。しかし、これも、かつて興味をもっていなかったから、今回のような事件に巻き込まれてしまうわけで、以前から興味があれば、多少、勉強なんかもしてたでしょ」倉橋は、ちょっと歯切れの悪い山田に言った。「山田さんは、この山田家に生まれたんだから、それは宿命。不動産は事業と思って取り組まなきゃ駄目なんですよ」
「事業ですか」きょとんとした目で、倉橋を見た。
「そう、事業。山田さんの家の財産は、まだいくらか知らないけど、それは事業で言ったら、資本と一緒」倉橋は、セミナーで話しているとおりのことを山田に言って聞かせた。「例えば、資産が10億円あれば、資本金10億円の会社と一緒なのに、どうも山田さんのような土地持ちの人たちは理解が薄いんだよね。山田さん、若いんだから、今からしっかりやらなきゃ、駄目なんですよ」
「そんなこと、思っても見ませんでした」事務所に来たときから暗かった山田が初めて倉橋を直視して笑った。「そうすると、将来、僕は社長ですか」
「そう。詐欺集団に詐取された財産を取り戻さなきゃ」そういうと倉橋は、山田にきっぱりと言った。「山田さんが本気でやる気なら手伝うけど、中途半端な気持ちでやるなら私も忙しいから手伝わない。どうする」
「先生が自ら手伝ってもらえるんですか」山田は、少し怪訝な顔で聞き返した。
「私が手伝うって言ったら、私が直接手伝う」倉橋は、きっぱりと言った。「もちろん秘書や弁護士も使うけどね」
「しかし先生が直接動かれるというと、費用的には、かなり掛かるんじゃないですか」山田は、また不安そうな顔で倉橋に質問した。「先ほど、お話したとおり、いま、あまりお金がないんですが」
「私は、お金のことは聞いていない。まずは、山田さんがやる気があるかどうかを聞いているんです」
「は、はい。先生が手伝ってくれるなら、やりたいと思います」
「じゃぁ、やりましょう」倉橋は、山田の見ている前で弁護士に電話をかけ、その日のアポイントを取った。「じゃぁ、午後9時でも構いません。急ぎの話なので、先生のほうも時間を取ってください」
「今日の9時ですか」山田は、申し訳なさそうに倉橋の顔を見た。
「山田さん、この件は、山田さんが思っているほど、簡単な話じゃないし、時間をかければ、掛けるほど不利になる話です」倉橋は、真剣に言った。「正直、一刻を争う勝負が必要です。まずは、少なくとも、この権藤の会社から移転された第三者の会社を調べ、関連性があれば、取り急ぎ、次に転売されないような手段を講じることが必要です。」倉橋は、山田に法律的な構成を簡単に説明すると、付け加えた。「山田さんは今から急いで家に帰って、今回の訴訟準備について、お父さんの承諾を取ってきてください」

山田が帰った後、倉橋は山積みの仕事を仕分けし、打ち合わせに出かける準備をした。


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