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不動産コンサルタント 倉 橋 レ ポ ー ト 2008年4月号
         
 
取り込み詐欺! 巧妙な手口 (2)

山田の父は、倒れてしまった。
周りのものと、一切、口を利かず、周りは理由が分からないまま、そっとしておいた。

道路局に土地を売却し、暫くしてから相続税が納付されたことは、税務署からの電話で分かった。山田の父は、この連絡を受けて一応に安堵しており、2億円を超えるお金を秋山らに騙し取られはしたが7億円を越える相続税の支払いができた事実と、彼らの努力で高く土地が売れた訳だからと、自分を慰めるよう努力し、徐々に体調の不良が改善されるようになってきた。

そんな、ある日のことだった。
「山田さんのお宅ですか?」慇懃な声の相手方は、税務署の職員であった。「恐れ入ります、昨年度に売却された土地の譲渡税の申告が、未だなされていないようなのですが」
「譲渡税?それは払ったじゃないか」相続税と勘違いした山田の父は、税務署の職員に怒鳴るように言った。「土地を売って、ちゃんと払っただろう」
「山田さん、落ち着いてください」相変らず慇懃に、税務署の職員は言った。「確かに相続税のお支払いは戴きましたが、その、山田さんのおっしゃっている土地売却に関しての譲渡税がお支払い戴いていないというご連絡なのです」

苦労して先祖から受け継いだ大切な土地を、その土地を維持するがために、仕方がなく手放したのに、さらに、その売却によって譲渡税が掛かるというのは、山田の父には理解ができなかった。

「相続税納税額を超えた売却代金については、長期譲渡税率で譲渡税が課せられることになっています」学校で先生が生徒に話すような口調で税務署の職員は言った。「もちろん山田さんは横浜市に土地を譲渡されていますので、税率も非常に低く算定されますので、その辺はご安心ください」
山田の父は非常に低く算定されるという言葉で、多少、安心はしたものの、秋山らに土地代金は詐取されていた為、手元に現金など、まったくと言ってよいほど無かった。
「ちなみに、その税金ていうのは、いくらなんだ」
「そうですね、私が計算した限りでは、5000万円くらいですね」税務署職員は、事務的に伝えると、納期を越えているので、若干の延滞税が加算される旨を加えて電話を切った。

山田の父は度重なる納税に頭を悩ませ、当時、サラリーマンだった長男の山田には相談せず、長女の夫、小川に相談した。
この小川は、千葉県で鉄工所を経営しており、数人の社員を抱えていた。そもそも秋山を紹介してきたのは、この小川であり、そういう意味では、多少、義務めいたものも感じてもらえるのではないかと、今までのいきさつを話すことにした。

「いやぁ、お父さん、ご無沙汰しちゃって」数日後、小川は山田の家にやってきた。世間では不景気だというのに、小川は新車のベンツを乗ってきた。「秋山の奴、おれの顔に泥塗るような真似しやがって、許せない奴ですね」
「まぁ、終わったことだから、そのことは忘れることにしたよ」山田の父は本当にそう思っていたし、家族にも打ち明けられない悩みを小川に託そうと考えていたから、秋山を小川から紹介されたことも、水に流すことにしていた。「それよりも、こんな通知がきてしまって困っているんだ」
「ま、仕方がないんじゃないですかね。資産家の悩みですよ」小川は、なだめるように言った。「私が何とかしますよ。安心して、任せてください。悪いようには、しませんから」

その日、理由も分からずについてきた長女も併せて、ちょっと、普段にはいけないような鮨屋で小川からご馳走になった。

「はじめまして、権藤と申します」後日、小川が連れてきた男は、福祉関係の仕事をしていると言う男だった。「小川さんから聞きましたが、とんでもない奴に騙されたそうで」
「まぁ、それは、私自身がいたらなかった訳ですから」既に、この話は、山田の父は思い出したくもなかった。「で、どういう話なんですか?」
「この人は、東京都内で多くの特別養護老人ホームを運営しているんですよ」小川が前振りで話し出した。「お父さんの話をしたら、まったくとんでもない輩がいるものだと、今回は、この権藤さんが、何とかして差し上げようということを言って頂いたので連れてきました」
「今回、手放された土地は、道路に収用されるわけですが、その残地は、ある意味、価値を創りやすい土地だと思います」既に権藤は、土地の図面をもっており、驚いたことに、その残地に計画図面まで落とし込んでいた。「いいですか、お父さん。この土地の価値は、せいぜい2億5000万円程度でしょう。しかし、この特別養護老人ホームの許可が取れれば3億5000万円は硬いところです」権藤と小川は、山田の父に、この事業を積極的に進めるよう促した。
「しかし、この土地まで手放さなくてはならないかね」躊躇して山田の父は言った。
「確かに納税には、この土地全部を手放す必要はないかもしれません」権藤は、山田の父の感情を見透かすように言った。「いいんです。この土地は一度、当社名義にして許認可を取りますが、許認可を取った暁には、お父さんも、この施設の運営に携わったって良いし、もし、それがいやなら等価交換方式にして、ちゃんと権利が確保できるように配慮します」

山田の父には、この話自体も、よく解らぬままだった。ただ、税務署の職員の言った延滞税という言葉が、早く納税しなければいけない気を起こさせ、背中を押した。

「とりあえず、この土地の名義を私の会社に移転してください。もちろん、この計画が駄目になったときは、私の負担で名義は戻します」淡々と、権藤は説明した。
「ご心配でしょうから、きちんとした念書はいれさせて頂きます」                         (続く)


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