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不動産コンサルタント 倉 橋 レ ポ ー ト 2008年3月号
         
 
取り込み詐欺! 巧妙な手口 (1)

「そんなことって、あるんですか?」 それは、まったく信じがたい出来事だった。

ちょっと気弱そうなクライアントの山田から、事件の概要を聞き出したときに思った率直な感想だった。
「これって、どうしようもないことなんでしょうか?」山田は、大手の上場企業に勤めるサラリーマンであるが、父が倒れ、地主の長男として生まれたことで、結局、父に代わって事件の処理をせざるを得なくなり、当職事務所に相談にやってきた。「これはもう、僕にはどうして良いのか分かりません」

山田の父は、祖父が亡くなり、莫大な相続税が課せられ、どうして処理してよいのか解らずにいたとき、たまたま相続対策と称して建築を勧められていた大手のハウスメーカーの社員、秋山に相談したことで事件に巻き込まれることになった。

「山田さん、私が良いコンサルタントを知っています」秋山は、山田の父に、自信ありげに言った。「私も、今の会社を辞めて、この人と一緒に仕事をすることになっていますから、私に任せれば、すべて悪いようにはしません」
このときの提案とは、祖父の所有する土地が、将来、計画道路に収用されることになっており、ある組織を活用すれば、高値で買い取ってくれる、という話だった。
そもそも、かような世に言う「うまい話」などある筈もないが相続税納税のことを考えると、「高く売れる」という言葉のマジックに掛かり、本当に高く売れるのであればと、この日、安易に白紙の委任状を渡してしまった。
「これ、契約書です」数日後、秋山は新しい会社の名刺を持参し、依頼した相手と称するいかにも暴力団関係者とわかる2人組を連れてやってきた。「この人たちに任せておけば、相場を越える価格の交渉をして貰えます」秋山はにこにこしながら、契約書を出して簡単な説明をし、署名捺印を求めた。
「ま、あんたを信用しているから、しっかりやってください」契約内容も確認しないまま山田の父は、契約書に署名捺印を行い、一切の交渉を委任してしまった。

その後、数ヶ月にわたって、秋山からは交渉の経緯の報告を受け、なんとなくうまく交渉が進んでいると思っていた。その報告では、土地の価格は交渉の都度、値上がりを続けており、さすがに暴力団の組織の力は強いものだと感心して、山田の父は、感謝する気持ちこそあれ、疑う余地などまったくなかった。

「山田さんのお宅ですか?」電話口の年配の女性はいかにも公務員らしい口調で言った。「秋山と言う人が、ん〜、ちょっとガラの悪い人達を連れて、山田さんの代理だと言っているんですが、間違いはありませんか?」
「ええ、間違いはありませんよ」ガラの悪い人たちと言うのは、いつか来た暴力団関係の人だろうな、と思った。「私の土地のことは、すべて任せてあります」
「ならいいんですが、契約書も間違いありませんか?」ちょっと疑念を持った口調で再度、確認した。「契約内容も、間違いはないですか?」
「はい、すべて任せてあります」秋山に役所からの電話には、すべて秋山に任せてあると答えて欲しいとの指示を受けていたので、そのように答えた。
「なら、いいんですが・・・・・。」何か伝えたいことがあるような口調であったが山田の対応から、変なことでも言って、あとで嫌がらせでもされたらまずいとでも思ったのだろう、早々に電話は切られた。

一応、電話の件を秋山に伝えた所、あの女、絶対に電話をするなって言っておいたのに、とか何とか、電話の先で言っていたが、最後に間もなく決着がつきます、もう暫くの辛抱ですなどと言って、電話は切られた。

「価格は、約9億5000万円にほぼ決まりました」秋山からの電話で、意外に早く決着がついたことに安堵し、それが、別段高くもない金額であることの検証はしなかった。「近々、書類を取りに伺います」

指示された権利書、遺産分割協議書、そして実印を用意し、自宅で待っていると、秋山が道路局の役人2人を連れてやってきて、てきぱきと書類のやり取りを行った。
「ではこれで、手続きは終わりです」道路局の役人の上司だろう人物が言った。「今回は、土地の取引ですから、1週間後に代金の全部を指定の口座にお振込みをして終了です」

山田の父は、意外に簡単な手続きに驚きながらも、これで7億円を越える相続税が支払えると、喜んで処理を終えた。

1週間がたち、複数ある銀行の口座を確認したが、代金は振り込まれていない。そういえば、道路局の役人は指定の口座に代金を振り込むとは言ったが、山田の父は秋山や役人に銀行口座を伝えた覚えがない。そこで、早速、秋山に連絡を取った。
「ああ、山田さん。大丈夫ですよ、確かに代金は振り込まれていますから、ご安心してください」電話口の向こうで、秋山は快活に笑った。「入金は、確認済みです」
「ああ、それは良かった」山田の父は、安堵しながら言った。「ところで代金は、どの銀行の口座に入っているんですか?」
「え、何言ってるんですか」秋山は、不思議な声で言った。「お約束のとおり、当社の口座に入金されていますよ」
「あ、そんな約束だったっけ」山田の父は、秋山に対し、初めて疑念を持った。
「契約書にそう書いてありますよ、確認してみてください」秋山はちょっと、ふてぶてしい声で言った。「相続税の納税額を超えた部分は、当社のコンサルティングフィーで戴きます」
「なに、相続税は7億ちょっとじゃないか。おたくらの手数料が2億円を越えると言うのか」
山田の父の声など、すでに秋山の耳に入るはずもなかった。           (続く)


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