現在、タイのバンコクにいる。
かねてから、ご案内のとおり、重量鉄骨ユニット工法(頑強なシェルターのような工法)の住宅建築工法と建築を研究し、実際、タイのサイアムスチールの工場内に試作住宅を建築しており、そのお披露目の視察ツアー企画の為、段取りなどを行っている。
過去のレポートでもお知らせしたが、今後の建築業界は悲惨な状況に突入する。
原油価格高騰による諸物価高騰は凄まじく、サブプライムローンの破綻によって、今後、金融システムもかなり痛むし、基軸通貨である米ドルの価値が崩壊すれば、世界通貨価値はバランスを失う。併せて中国の食品不安によって食材類の価格は高騰せざるをえない。
原油、素材、食料などの高騰にあわせて、金融システム崩壊によるインフレーション。
そんな中で賃料が上がらない日本国内の賃貸住宅経営においては、価格高騰の煽りを受けた高額な賃貸住宅の建築はリスクが高い。にも拘らず、相続対策や土地活用のように建築をせざるを得ない人はいる訳で、かような状況の中での建築とは、と、考案したのが、今回の住宅、建築工法なのである。
そもそも、日本の建築の工程や職工は多すぎるし、大工などの職人への属人性は高く、生産性が低い上、工事業者によって質的なむらが多い。また、ご承知のとおり耐震偽装や手抜き工事のように、現場での施工によってせっかく建てた建築物が無価値な存在になることも多く、施主としては大きな資金を投下するのに、リスクが高いのである。
これらをすべて解消するには多くの工程を短縮して工場生産の依存度を高めるしかない。
実際、原価計算を重ねているが、ローコストのワンルームの場合、実行予算で一坪当たり40万円を切るし、今回の試作品のような高級志向にしたところで一坪当たり50万円を少し超える程度で建築が可能となる。もちろん為替でも影響してくるが、日本の建築基準をクリアするためには、鉄は日本製を取り入れることになるので、そう大きな影響は受けない。
また今回のミッションとしては地震の多い日本に適した住宅にすることを盛り込んでいる。
実際、大震災によって亡くなられた方の多くは、建物の崩壊、家具の倒壊、そして火災のような二次的災害によって亡くなっている。
今回の住宅はローコストを追及するだけでなく、安全性をも追及する為、あえて重量鉄骨で躯体を製作し壁はコンクリートにしている。
また一般住宅においては、オプションとして括り付けの家具をオーダーできるようにしている。今回のユニット工法では四角いユニットを組み合わせて製作する為、角々の部分は、頑強な柱が2本重なることになり、ただでさえ頑強な重量鉄骨造がさらに頑強なものとなるつまり地震の際に発生する建物の倒壊、家具の倒壊、そして火災などから身を守ることのできる住宅なのである。
例えば、この住宅の設備をプロパンガスにし、ちょっと古いかもしれないが太陽熱温水器を設備して自家発電装置を準備すれば、大震災のときのようにインフラが寸断されたところで建物は倒壊しないし、電気、ガスは使用できるし、しばらくは太陽熱温水器に溜まった水を使用できる為、周りの生活環境とは大きく違った被災生活を送ることができる。
また、ユニット工法の場合、立方形のユニットは地震くらいでは変形しない為、仮に地盤が歪んで建物が傾いたところで、ユニックを持ってきて建物を持ち上げ、基礎部分を補修すれば、また、通常の住宅に回復できるから、他のように傾いた建物を取り壊して解体撤去し、新規に建物を建築しなおすような経済的なダメージを受けなくてすむ。
併せて、この住宅の特徴は、ユニット工法、工場生産をコンセプトで製作されている為、輸送手段を考慮し、海上コンテナで輸送できるサイズとなっている。つまり、移動が容易だ。
例えば相続対策上、どうしても賃貸住宅を建てなければならない場合、従来の手法としては、木造のアパートや鉄筋コンクリートのマンションを建築するしか方法はなく、賃貸市場の低い場所などでは、空室リスクは高い上、相続発生時点で、この物件を売却しようとすればキャップレートを基準に価値を判断される為、場合によって、土地代金はただ、という自体も想定されうるし、エリアによっては、建築代金をも下回る結果にもなりかねない。
しかし、この建築工法では、建物自体を移動できるというメリットがある為、運用方法さえ間違えなければ賃貸借関係を解除して、必要でなくなった建物は移動することができる。現在検討中であるが、不要となった建物を中古市場で流通させることも可能であるし、タイに戻してリニューアルして世界のマーケットで売却することもできる。また一般住宅においては、家ごと引越しすることが可能となる為、いちいち買替時の金銭的リスクを負うことなく、土地さえ手当てすれば良いだけになる。
その他にも、いろいろとメリットがあるが、目だったデメリットは感じられない。
わかり易くいうと、安全設計が必要なもの、例えば自動車が木造でないのと同様、日本の住宅はスチール製に向かうのではないか。そんな提案をしてゆきたいと考えている。
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