ここの所、やたら資金不足の話を耳にする。
また無理な経営を続けてきて、倒産する企業も少なくない。その多くの企業は、営業年数も長く、長い歴史のなかで事業を継続してきた老舗と呼ばれる企業も多いが、バブル経済時点で蓄えた利益などを吐き出しきって倒産、という深刻な事態だ。
この現象は、不動産業においても例外ではなく、全体の8割程度が赤字決算という状況の中で、建築会社等も同様に、倒産が相次ぎ、結果的に、下請け、孫受け企業にまで連鎖し、そこに働く人たちの収入が途絶え、あるいは減額されてしまうから、まだまだ全体的に可処分所得は減少の一途をたどることになる。
また、これらにともない、個人消費の減退は、あらゆる業種業態に影響をもたらし、最近では、ご存知のとおり、食品業界などに結果的に連鎖し、質的低下につながっている。
昨今の食品業界の不祥事などをみれば、すでに限界にきていることがわかる。
大手のまともな企業は何とか理解を受けて「値上げ」を行うことができるが中小零細企業では、元受企業からのコストダウンの強要などによって「値上げ」などできる筈はなく、無理な経営を繰り返している。そもそも、利益など上がらない仕事を引き受けては、資金繰りにまわしているわけだから、勘定あって銭足らずの状況が続き、これを3年も赤字を垂れ流していれば、金融機関を通じて、市場から追い出されることになる。結局、儲かっているのは大手の元受各社や商社などで、実体経済を支えてきた下請け中小零細企業は、倒産、廃業に追い込まれることになる。食品業界においてはそれを回避する為に、まともなやりかたでは通用せず、内容物を誤魔化したり、消費期限が過ぎた廃棄するべく商品を再利用するなど、本来の「安全でおいしい商品」をつくるという社会的使命を度外視した仕事を繰り返し、生き延びる為の施策が、本来やってはいけない違法行為であるから、結果的に消費者との信頼関係を破壊し、自らの経済活動に終止符を打ってしまう、という構図になっている。
また、日本国の政府や官僚たちは、国民のために働くべきところ、国民の税金や年金を詐取していると言われても仕方がない、ていたらくである。
日本国民は貧富の差こそあれ、全体的にみれば、個人の保有金融資産は他国と比べて非常に高く、勤勉、節約に努めて富を築いているひとが多いわけだが、皮肉にもこれらの人は、消費はしない。比して消費を必要とする普通の勤勉なサラリーマンからは「源泉課税」で自動的に税金を巻き上げてしまい、挙句の果てに住民税の定率減税を廃止してしまったから、サラリーマンの可処分所得はさらに低下し、国内消費は縮小する一方である。
過去において、日本国民の支払ってきた税金や年金を、政府も官僚も、垂れ流し状態で消費しきっていたわけだから日本国に資産はなく、帳尻など合う筈がない。予算と称して、使い切る消費。使い切らなければ、次の予算が通りにくいという理由で、繰り返されてきた消費によって、本当に日本の国は豊かになったのだろうか。本当にこれが正しい社会なのだろうか。一度、全部を見直す時期にきているのではないかと考えている。
商売の基本は、「顧客の利益」である。また、政府、官僚の存在価値は、「国民の利益」である筈である。その辺の概念を逸脱しすぎた商売のあり方も、政治のあり方も、すべて見直す必要性を問われている時代に突入しているのではないだろうか。
我々に近い業界で考えてみれば、建設会社は、居住用建物を建てる場合、安全で快適に暮らせる建物を建てることに注力するべきであるし、その建物を建築するオーナーも管理運営する人も、同一の方向性で入居者に向いた「商売」として考えるべきであるし、ファイナンスを担当する金融機関は、リスクのマネジメントを担当するわけだから、金融理論などに基づいた適正な評価をもって融資をするべきである。
最近、金融機関の融資では、かなり厳しい条件が課せられることが多くなった。これは、サラリーマン投資家と呼ばれている人たちの中で不動産投資を行っている人たちがおり、彼らの一部が地方の高利回りの収益目的不動産を購入して運用に失敗、デフォルト(債務超過)状態に陥っている人たちが増えている、という理由で、融資の条件を絞ってきているわけだが、これらは金融機関の無知からくる失敗である。キャップレート(資本化率)の概念や、金融工学的知識をもたない旧態依然とした体質が、本来の信用創造的役割を放棄し自らの商売に歯止めをかけ、全体の利益を喪失させていることを彼らは知らないのである。
最近、講演で日本全国を飛び回っているが、地方圏においては明確に賃貸住宅の稼働率が低下している。例えば、「札幌」の新築アパートなどは、新築であるにも拘らず一向に埋まらない、という物件も多く、地元の人たちは「何でこんなところに、アパート建てているんだろう?」と不思議に思う場所に建築が進み、首都圏のサラリーマンが買っているという。
「このままでは、札幌の不動産は駄目になる」という危機感をもった某企業の社長から、直接、CFネッツグループの出店を依頼され、現在、検討に入っている。先日の函館もそうだが、市場環境が縮小しているエリアにおいては、投資に見合う地域は限られており、首都圏のような不動産投資は実現できない。また、空室リスクや運営費などを考慮すれば、当然、キャップレートを上げざるを得ないことを考えると、新築アパートのリスクは高い。これらの物件に首都圏並みの融資、いや、首都圏より有利な融資条件で融資をしているのだから、デフォルトが起きても仕方がない。不動産投資の失敗事例の典型的なパターンであるが、売る人は素人、買う人も素人、市場性を無視した賃料設定をもとに融資する金融機関。
結果、当然、買い手だけが損する構図が出来上がることになる。
資産背景が脆弱な「サラリーマン投資家」と呼ばれる人々。地方圏でリスクの高い投資をして失敗すれば、場合によっては、一生立ち直れないことにもなりかねない。不動産投資の一般著書を始めて出版した著者として、現状の間違った投資に警鐘を鳴らすことにした。
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